人気ブログランキング | 話題のタグを見る

佐藤玲緒奈+サイトウマコト

公演日:8/11/18:00・8/12/14:00

佐藤玲緒奈+サイトウマコト_d0091299_13283122.jpg

佐藤玲緒奈=ソウダバレエスクールを経てワガノワバレエアカデミー留学。数々のバレエコンクールで上位入賞。'04年よりスロバキア国立バレエ団所属。

サイトウマコト=アングラ演劇を経験した後、ジャズダンス、バレエ、コンテンポラリーなど幅広いダンスを展開。指導者としても多くのコンクール受賞者をサポートしている。

佐藤玲緒奈+サイトウマコトの「一秒分の五十年」(11日、12日)は、男女の絶望的な出会いをモチーフとした、セツナイ作品です。佐藤は「ダンスの時間」初期から出てくれていますが、スロヴァキア国立バレエ団に行って、表現力が格段に増したように思います。プロのバレエダンサーを間近に見ることも珍しいと思います。なお「五十年」というのは、サイトウの「50 years」という作品を遠くベースにしていることを表しています。 (ジョウネン)

佐藤玲緒奈+サイトウマコト_d0091299_10482770.jpg

「一秒分の50年」
出演=佐藤玲緒奈+サイトウマコト、振付=サイトウマコト
 2004年にスロヴァキア国立バレエ団の所属となった佐藤は、「ダンスの時間」スタート当初から多くのサイトウ作品を踊って、コンテンポラリー・バレエの魅力を教えてくれていたが、本作でも一層豊かになった表現力を駆使して、叙情豊かで濃密な世界を見せてくれた。
 中央の小さなスポットライトを挟んで向き合った二人が鏡のように同じ動きをする。双生児のような、存在の片割れ同士であるようだ。このシーンはラストにも再度提示されるが、それは単に作品を終息させるためのソナタ形式として選ばれたのではなく、繰り返されることによって時間が停止していることを示したように思われる。
 時間が停止するとは、永遠ということだが、この2回のシーンの間には、佐藤のソロを前面に押し出しながら、2人のコンタクト、サイトウの短いが印象的なソロと、様々な世界が繰り広げられる。
 2人のコンタクトでは、ほんの少しバタバタして流れが滞るようなところがあったように思えたのが残念だったが、動きを小さくまとめるのではなく、遠心力を使うなどダイナミックな動きを見せるのは、サイトウの真骨頂。のびやかな動きと無表情な顔つきが魅力的な佐藤のソロの背後で、それを遠望するように照明から外れた奥や隅でサイトウが微かに動いている。二者の間は隔絶されているようで、大きな時空の広がりが見られた。
 佐藤は女性バレエダンサーとしては大柄なほうだと思うが、それをよく生かしてダイナミックに世界を創ることができる。四肢をリリースして放り出したような動きがパペットのようで、感情どころか生命も吸い取られた姿が哀しみを誘う。ラストで向き合ったときの表情は直面している相手の向こう側にある本質的なものを希求しているようで、強い力があった。今後もコンテンポラリー作品を大切にして、新しい世界を拓いていってほしい。

by timeofdance | 2007-08-16 01:05 | 佐藤玲緒奈+サイトウマコト  

<< 由良部正美 片上 守 >>